調剤室の窓から空が見えないことに、五年目で気づいた

仕事のハナシ

転職したいと思ったのに、なかなか動けない時期が一年以上ありました。薬剤師という資格があるから食いっぱぐれはない、でも今の職場を離れる踏ん切りもつかない。そのあいだずっと、転職サイトのページだけ開いては閉じる日々を繰り返していました。

新卒で入ったのは調剤薬局です。病院の門前薬局で、毎日同じ医療機関の処方箋を大量にさばいていく仕事でした。最初の二年は慣れることに必死で、しんどいとか余裕がないとかを感じる暇もなかった。でも三年目あたりから、ふと「私はこの仕事で何を積み上げているんだろう」という疑問が出てきました。こなしている、という感覚が強くなってきたんです。

決定的だったのは、後輩の指導を任されたときでした。「この職場で身につけてきたことを伝える」という場面になって、自分が何を得てきたのか言語化できなかった。それが正直こたえました。資格はある、経験年数もそれなりになってきた、でも専門性という意味では薄いままかもしれないという不安が、そこで初めてはっきりした形になりました。

転職先として選んだのは、在宅医療に力を入れているクリニックに併設された薬局です。患者さんの自宅に訪問して服薬状況を確認したり、医師や訪問看護師と情報を共有したりする業務があります。調剤室の中だけで完結していた以前の仕事とは、関わる人の範囲がまるで違いました。

慣れるまでは戸惑うことの連続でした。でも患者さんから名前を覚えてもらえたとき、「薬剤師の仕事をしている」という実感が久しぶりに戻ってきた気がしました。遅かったかもしれないけれど、動いてよかったと思っています。

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